中外陶園ではたらく人 開発チーム 主任 山田 智晶さん

子育てしながらの再就職。背中を押したのは“ものづくりへの想い”でした

中外陶園に入社してちょうど10年です。上の子が保育園に入れるタイミングでの再就職でした。現在の仕事と同じ「開発チーム」で求人があり、応募して採用されました。デザインを考えて商品にするまでの、商品開発を一貫して担当しています。

もともと、ものづくりに興味があって、芸術系の大学に進学を希望していました。出身は兵庫ですが、愛知県の大学に行くことになって、そこで「やきもの」に出会ったんです。全国でも珍しい「やきもの専攻」がある大学で、伝統工芸のけっこう偉い先生のもとで4年間勉強しました。

卒業後は作家を目指す人も多く、私も先生にそう勧められましたが、なぜか若気の至りを発揮して(笑)、そのままの道を進むことに疑問を抱き、一般社会で働くことを選択。ギャラリー展示もやっている器を扱うお店に就職しました。人と接することが好きなので、仕事はとても楽しくて。やきものはすっぱり辞めて、やりがいをもって一生懸命働きました。

もう一度ものづくりに関わりたい、という気持ちが湧いてきたのは、結婚、妊娠、出産を機に、いったん退職していた29歳の時です。30代を目前に、これから自分はどうしたいのか考えたら「やっぱりやきものの道に戻りたい」と。それで、瀬戸市の窯業技術専門校に通うことにしたんです。就職を前提とする専門学校での学びは、大学とはまた違う刺激がありました。1年間、駆け足でみっちり勉強しました。

たくさんの壁を乗り越えて、デザインが形になったときの達成感は格別!

入社後は、「そもそも縁起物とは?」という基本的なことを自分で勉強するところから始まり、企業でのものづくりの大変さ、たくさんの人に届けるものをつくることのハードルの高さに驚くばかりの毎日でした。つくっては壊しつくっては壊しで、最初の頃は本当に心が折れそうになりましたが、それでも、ものづくりに関われる喜びが勝っていましたね。

そんな中、3年目くらいでしょうか。「瀬戸まねき猫」という新しいブランドを立ち上げることになって、私がその最初の型をつくることになったんです。初めて自分がつくりたいものをつくらせてもらえて、それが世に出た時、「私もようやく何かつくれるようになってきたのかな」という気持ちになりました。以来、既存の「薬師窯」とともに、「瀬戸まねき猫」を自分の仕事のひとつの柱としてやらせていただいています。

私たち開発チームは、つくる商品をメンバーで割り振って、それぞれに案件を進めていきます。担当する品物のデザイン画を描くところから始まり(私は色鉛筆を使って紙に描きます)、それを社長にプレゼン。OK、となったら、立体にするための図面に起こします。

そこからは、陶磁器の原型師さんに実際の形をつくってもらい、OKが出たら型屋さんに型をつくってもらい、それがまたOKになったら弊社の自社工房である「須原陶磁工房」の鋳込師さんに鋳込みをしてもらい、サンプルを上げるところまでを通しで担当します。スムーズにいくこともあれば、何度もやり直しを重ねることも。絵付けの段階で「思っていたのと違った」となることもあります。その都度、職人さんとの橋渡しをするのも私たちの役割で、だいたい、ひとつのデザインが商品の形に落ち着くまでに1か月半~2か月はかかりますね。出来上がったサンプルを元に、生産工場に製造指示をして生産ラインにのせるまでを開発チームが担当しています。

形の壁、絵付けの壁、スケジュールの壁…乗り越えなければいけない壁だらけではありますが、苦労するぶん、単純に「出来上がった!」という喜びも大きい仕事です。

そしてここ1年ほどは、商品開発の仕事と並行して、各分野の社内では若手とされるスタッフで構成する「ブランディング推進」チームにも携わっています。70年の歴史をもつ中外陶園は、今後、どういう未来へ向かっていくのか。全員でチャレンジし続けていくにはどうしたらよいかを、チームで考えています。

仕事はもちろん、人生の先輩も! 大きな家族のような職場環境です

弊社は、女性に優しい会社だと感じています。瀬戸は小さな窯元や小規模の会社も多く、10年前に再就職活動をした際は、正直、子供が小さいうちは働くのは難しいかな、というところも多かったのですが、中外陶園は当時から産休や育休など子育て支援もあり、それが応募の理由のひとつにもなりました。「こんな会社があるんだ」と思ったことを覚えています。

ただ、制度はあったのですが、実際に利用したのは私が初めてだったようです。入社後、第二子を妊娠・出産した時には、産休と育休をとり、復帰後も会社と相談しながら、サポート体制を整えていただきました。バーベキュー大会など社内のイベントにも子連れで参加できたり、急に子供が預けられなくなった時には「連れてきていいよ」と言ってくれて、恐縮しながら子連れで出社すると、会長直々にお菓子をくれたり(笑)。

40人の社員のうち8割ほどが女性で、長く勤めている“お母さん”的な先輩もいるし、なんだか大きな家族のような雰囲気です。

子供たちに職場を見せられるというのも、ありがたいことだと感じています。今年中学生になる上の子は、「STUDIO 894」も好きで、ものづくりに興味をもっているようです。そんなふうに自分の仕事を知ってもらえて、いい影響を与えられられているのなら、すごく嬉しいことですよね。

新たなチャレンジが続々と進行中。ぜひ仲間になってください

今、中外陶園は、新しいプロジェクトがいろいろと動き出しているタイミングです。私自身も、下の子が小学生になって少し手が離れたこともあり、積極的にチャレンジしていきたいと思っています。

ものづくりとか、絵を描くことが好きな方は、力を発揮できる仕事だと思います。この社会で、ものづくりを仕事に直結させることは意外に難しかったりするのですが、中外陶園はそれが叶えられる会社だと感じています。 やきものの知識がない方でも、一緒に学んでいける環境ですので、「好きな気持ちを大切にしたい」という方とともに仕事ができたら嬉しいですね。工芸の産地・瀬戸ならではの伝統的な仕事に、時代の空気を取り入れながら、新しいものづくりに挑戦していく。きっと、大きなやりがいを感じられると思います。

お気に入りの招き猫は、伝統的な技法で描いた「染付」の瀬戸まねき猫

お気に入りの招き猫は、伝統的な技法で描いた「染付」の瀬戸まねき猫

学生時代はろくろを引いて器をつくり、そこに瀬戸の伝統的な染付技法で絵を描いていました。そこでふと思いついて、招き猫にホワイトブルーをまとわせてみたんです。それが「瀬戸らしいね」とお声をいただける商品になって、たくさんの人の元に渡っていっているのは、本当に嬉しい。自分自身の好きなことが仕事として形になった、思い入れのある招き猫です。

お気に入りの招き猫は、伝統的な技法で描いた「染付」の瀬戸まねき猫

中外陶園ではたらく人 開発チーム 主任 山田 智晶さん