干支飾りでしあわせ招く!その起源から供養の仕方まで

その年のしあわせを願って飾る干支飾り。でも干支って何だろう?

古くから、日本人の暮らしに深く根ざしている干支。その年の干支をかたどった「干支飾り」を飾ると、縁起が良いと考えられてきました。当たり前のように受け入れられている「干支」ですが、古代中国から続く時間の考え方と日本の動物信仰が混ざり、浸透していく中で、今に続くかたちになっていったようです。

中外陶園の商品の中でも人気の高い干支飾りの起源を探り、中外陶園が干支飾りに込めた思いや、飾り方、さらに供養の仕方までご紹介します。

はじまりは古代中国! 陰陽五行説って?

占いや風水などで、「陰陽五行説」という言葉を聞いたことはありませんか? すべてのものは相反する「陰・陽」の2つの気からできているとする「陰陽説」と、すべての物質は「木・金・土・火・水」の5つの要素によって構成されていると考える「五行説」が合わさった、紀元前の中国で始まった思想です。

そこに、「十干(じっかん)」という、「甲(こう)・乙(おつ)・丙(へい)・丁(てい)・戊(ぼ)・己(き)・庚(こう)・辛(しん)・壬(じん)・癸(き)」の10でひとまわりとする数え方が結びつきました。

「十二支」の由来

月が12回満ち欠けすると季節が1周することと、天文学の発達により木星が12年かけて地球を一周することが発見され、「12」を一区切りとする考え方も生まれました。これが「十二支」の起源です。

十二支には自然界の法則と対応させて、植物が変化する様子を意味する漢字「孳・紐・螾・冒・振・已・忤・昧・呻・緧・滅・閡」が当てられました。それぞれの漢字は、種から芽が出て葉が茂り、実がなった後に枯れ、また種の状態になるまでの各状態を意味しています。

この12の漢字を覚えやすく簡略化したものが、「子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥」なのです。

●「干支」はもともと暦の用語

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「十干」に「十二支」を順に組み合わせたものが「干支(かんし)」です。「甲子(きのえね)」から「癸亥(みずのとい)」まで60の言葉が作られ、暦や時刻、方角などを表わすほか、吉凶を占う目安にもなりました。60歳を「還暦」と呼んでお祝いするのは、60で暦が一巡したことを表しています。

陰陽五行説の「陰」は「兄(え)」、「陽」は「弟(と)」と考えられ、日本では「兄弟(えと)」と呼ばれるようになったとも言われています。

十二支に身近な動物を当てはめた

古代中国では、十二支の漢字の意味とも関連させて、その年に生まれた人がもつ特徴に身近な動物の性質を当てはめ、この考え方を広めようとしました。もとの漢字にはその動物の意味はありませんが、「陽」の動物を「鼠・虎・龍・馬・猿・犬」、「陰」の動物を「丑・兎・蛇・羊・鶏・豚(猪)」とし、十二支に当てました。(「龍」は架空の動物ですが、古代中国では目撃したという言い伝えがあったそうです。)

中国ではこれらの動物は「十二生肖(せいしょう)」と呼び、「十二支」の漢字とは明確に区別されています。ですが、日本では十二支が伝わったときに、漢字と動物の区別をせず、「子(ね)・丑(うし)・寅(とら)・卯(う)・辰(たつ)・巳(み)・午(うま)・未(ひつじ)・申(さる)・酉(とり)・戌(いぬ)・亥(い)」と日本語で動物を意味する読みを当てました。そのため、この読み方は日本独自のものなのです。

日本では、暦とともに伝わり、仏教信仰とともに広がる

日本には、古墳時代に朝鮮半島から僧を招くことで暦が伝えられ、飛鳥時代には日本で最初の暦が作られました。飛鳥〜奈良時代になると、キトラ古墳の内壁や正倉院の宝物など、装飾にも十二支の動物モチーフが使われています。

また、仏教がインドから中国に伝わる中で、薬師如来に従う十二神将と十二支が融合していきました。新薬師寺に祀られている、日本最古(奈良時代)の薬師如来に従属する十二神将には十二支が配されていて、融合の歴史の一端をうかがい知ることができます。平安時代以降には、頭上に十二支の動物を乗せた十二神将が作られるようになりました。

日本の信仰と十二支の結びつき

一方で日本では、十二支が入ってくる以前から動物を信仰の対象とする考え方がありました。蛇を水の神としたり、猿や兎を神の使いとしたり、動物を神や、神の使いとして祀っている神社は全国に数多くあります。十二支の動物は、そのような動物信仰や神話由来の信仰と結びついていきました。

また、暦の考え方である「十二支」が浸透するにつれ、祭祀もそれと合わせて開催されるようになりました。今でも商売繁盛を願うお祭り「酉の市」は、11月の「酉の日」に開催されますね。ひな祭りは「上巳の節句」とされ3月最初の「巳の日」に、端午の節句は5月最初の「午の日」に行われるなど、今に続く季節の行事も、「十二支」を由来としています。

●縁起物としての十二支

『大小暦帖(尾嶋氏旧蔵古暦コレクション)』,刊. 国立国会図書館デジタルコレクション

豊原国周 筆『奇術十二支之内』5,植木林之助,1877. 国立国会図書館デジタルコレクション

江戸時代には、「大小歴」というカレンダーが庶民の間で流行。十二支の動物は縁起が良いとされ、定番のモチーフとなりました。絵巻物や浮世絵にも、かわいいものから迫力のあるものまで、たくさんの十二支が描かれています。なかでも、家内安全を祈って、十二支が合体し一匹の動物として描かれた浮世絵「家内安全ヲ守 十二支之図」(太田記念美術館蔵)[外部リンク:太田記念美術館 公式note ]は、コロナ禍においてもたいへん話題になりました。おだやかな世を祈って暦に沿った祭祀や行事を行うことに加えて、十二支の動物たちは、それ自体が縁起の良いもの、しあわせを招いてくれるものとして次第に定着していったと考えられます。

現在でも、しあわせを祈る人の気持ちは変わりません。年のはじめに心安らかな一年を祈願して、十二支の動物をかたどった「干支飾り」を飾る習慣は、日本人の生活に深く根付いています。

薬師窯の干支飾り

中外陶園では、創業以来干支飾りを作り続けています。中外陶園のある場所は瀬戸市薬師町。行基作といわれる薬師如来の祠が江戸時代の末頃まで中外陶園の敷地内にあったことに由来して、「薬師窯」という窯銘をつけました。創業以来「干支飾り」を作り続けているのは、薬師如来の眷属である十二神将にあやかって、薬師窯のやきものが日々の暮らしを守り、安らぎを与えるものでありたい、という願いからです。

招き猫と干支飾りの意外な関係 

十二支に猫が入っていないのは十二支の動物の選考会で鼠にだまされたから、という昔話がありますが、十二支に動物が当てられたのは紀元前。猫が中国に入ってきたのは1世紀ごろと言われており、古代中国においてまだ身近な動物ではなかったため、というのが真相のようです。

瀬戸は日本で最初に磁器による招き猫の生産が始まった地。中外陶園が干支飾りに加えて招き猫を作り始めたのは、十二支に入れなかった猫との強いご縁を感じたことがきっかけでした。招き猫も干支飾りも、どちらもしあわせを招く縁起物。仲良くより多くの福を招いてくれるよう願いを込めて、「薬師窯」 「瀬戸まねき猫」「SETOMANEKI」の3ブランドで招き猫を作っています。

干支飾りはどこに置く? しまうのに困ったら「干支供養」

一年間しあわせを招いてくれる干支飾り。玄関やリビングの高いところなど、家族からいつも見える場所に置いて、見守ってもらいましょう。すぐにしまわなくても、1年中飾っていても構いません。年末に、新しい干支飾りに置き換えるのを恒例にしてもよいですね。

もししまう場所に困ったら、中外陶園にお送りください。みなさまの暮らしを見守る役目を終えた干支置物を、感謝の気持ちとともに元の土に還す「干支供養」を行っています。開催は毎年2月11日。中外陶園敷地内の「干支塚」にて、全国から集まってきたたくさんの干支を薬師窯ゆかりの宝泉寺ご住職にご祈祷いただきます。

来年は巳年。蛇にあやかり、幸多き一年を

2025年の干支(えと)は巳(へび)。

蛇は水辺に棲息していることから、日本では水の神様とされてきました。縄文土器にもモチーフとして登場し、古くから信仰の対象となってきた動物です。音楽や財福にご利益のある弁財天の使い(化身)とも言われています。また、脱皮によって古い姿を捨て新しい姿に生まれ変わるため、「復活と再生」の象徴としても敬われてきました。

中外陶園の干支飾りでは、小槌や小判を包み込む姿に、幸多き一年になりますようにとの願いを込めています。あなたの一年を見守る干支飾り、どうぞあたたかくお迎えください。

中外陶園が手掛けるブランド「薬師窯」の干支置物をはじめ、「瀬戸まねき猫」「SETOMANEKI」のラインナップが揃うオンラインストアです。
ぜひお気に入りの一体を見つけてください。熨斗にも対応しています。

参考:
武光誠『日本人にとって干支とは何か 東洋の科学「十干・十二支」の謎を解く』初版 河出書房新社 2020年
キトラ古墳壁画保存管理施設 キトラ古墳とは https://www.nabunken.go.jp/shijin/about/
正倉院展 主な出陳宝物 https://shosoin-ten.jp/info/treasures/000200/
新薬師寺 十二神将 http://www.shinyakushiji.or.jp/junisinsho/ 
国立国会図書館 日本の暦 https://www.ndl.go.jp/koyomi/introduction/index.html
東京都立図書館 (tokyo.lg.jp) 大小暦の愉しみ〜錦絵を生んだ小世界|https://www.library.metro.tokyo.lg.jp/bunkaweek/2022/daishoreki/
太田記念美術館 公式note  https://otakinen-museum.note.jp/n/n170d02cc374d
sippo(シッポ)|犬・猫との幸せな暮らしのためのペット情報サイト 日本に猫がやって来た! 伝来の新事実、続々と発見https://sippo.asahi.com/article/12225441(すべて参照 2024-09-30)

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